強く冬らしい空気で、ここ最近は雪をよく見かけます
一応この写真、雪国じゃないですよ
六甲の山並みが雪化粧、です
昨日のバス帰り道。
途中の停留所で降りようとしている女性が
席を立った後、なにやらしゃがみこんでいる。
通路をはさんで横に座っていたボクは「どうかされたのですか」と聞くと
「100円落としました。転がってきませんでしたか?」
立っているお客さんもたくさんいる中、しかもバス内ライトの薄明かりの中
降りるときに払う100円玉を落っことし
それを慌てて探しているようだった。
「いや、こっちにはこなかったようですが・・・」
あちこち周囲を見つつ答えている間に
運転手は扉を閉めて、出発しようとした。
「すみません!降ります!!」
そのメガネの娘さんは、100円を諦めたのか、立ち上がり出口に向かった。
そのとき、様子を見ていた隣の男性がふと
「どうしたのですか?」
一風変わったイントネーションで訊ねてきた。
「100円を落としたらしいのです」
外国人らしいその人は、座席から足を持ち上げて下を見始めた。
「あああっ!!」
なんとその男性の足元に、100円玉がきらり・・・。
すぐさま男性は出て行く娘さんに向かって、窓ガラスをごんごんたたき
見つかったことを知らせようとした。
男がバス内から発見の合図を送るなか
家路に急ぐ娘さんはそれに気付かず、バスは遠ざかっていった・・・
そして残された男2人。ここからが今日の本題。
さてその100円をどうしたものか。
アゴひげを生やした茶色い肌の彼は、
横に座るボクの手にその100円を押し付けた。
男に返そうとする僕。
いらないと押し付け返すその男。
「いや、これはボクはもらえない・・・あなたが拾ったんだから」
と渡そうとしても、彼は頑として首を縦に振らなかった。
「じゃあいっそのこと落としておいた方が・・・」
と言っても、僕の手を押しのける。
何度となくそんなことを繰り返した後、
このお金、どうしたものか・・・
さっき100円を必死で探していた娘さんのことを思うと
返してあげたいと思うが、すでにバスは離れていて渡すことができず、
だからといって、
とても自分の懐に入れようというような気は湧いてこなかった。
思案しつつもバスは前へ進む。
少しの間をおいて、横の彼が人懐こい笑顔で話した。
「ワタシ にほんご あまりできない」
「どこから来られたのですか?」
「バングラディッシュ。」と言ったあと、指をさし、
「神戸大学に。」と男性はいった。
彼はジェスチャー交じりで、カタコトの話しをした。
「前に落としたことある。オカネ。」
以前、日本に来てからなのか、母国でなのか
同じようにお金を落としたことがあるらしい。
「わかりました。運転手に渡します」
前を指さしつつ彼に話すと、ようやく笑いながらうなずいた。
ボクの降りる停留所になり、出口で運転手に経緯を話しつつ
その100円玉を手渡した。
「それはどうも。」
たぶん、あの娘さんに渡ることはないだろうなと思いながら、
階段をおりて、冷気に震えながら、外からバス内をふと見ると
ひげの男は、にこりとしながら頭を下げてきた。
つられて僕も、笑いながら頭を下げた。
そしてバスは、重いエンジン音を響かせて、出発していった。
二度と出会わないであろう人々との、とっさの出来事。
どうすれば一番よかったのかはわからない。
女性にお金は返せなかった。
でも、
バングラデシュの男のやわらかい笑顔が脳裏に焼きつき
ちょっぴり、ほのかにあったかくなった。
・・・・・帰ってすぐ、地図を開きバングラデシュを探すボク・・・って、おいおいっ
ヨシダ
※以前のブログから移転したため、写真はありません。 [0回]
PR
http://wadaikoedu.blog.shinobi.jp/Entry/23/バスと娘と100円と、外国人の男と僕